動注治療arterial infusion therapy
慢性疼痛に関係する「モヤモヤ血管」を塞栓する治療法です。
動注治療とは?
動注治療とは、手首や足首の動脈から極細の注射針を使い、局所に薬剤(イミペネム・シラスタチン由来)を注入し、炎症に関係する「モヤモヤ血管」を塞栓する治療法です。
この治療はオクノクリニックの奥野先生によって2014年に開発されたものです。
当院はオクノクリニックとライセンス契約を結び動注治療を行なっております。
「モヤモヤ血管」とは?
医学的には「病的新生血管(pathological neovascularization)」と呼ばれます。
見た目が霧がかったようにもやもやして見えることから、「モヤモヤ血管」と呼ばれるようになりました。本来は存在しない血管が、炎症によって密かに作られ、神経と一緒に痛みの信号を出し続けます。当院では、この「モヤモヤ血管」を直接治療することで、根本的な痛みの軽減を目指しています。
提供元:Okuno Clinic. 奥野 祐次医師
発生の仕組み
- 慢性的な刺激や炎症
関節や筋・腱に負荷がかかることで、小さな炎症が続く状態になります。
- 組織が酸素不足・栄養不足に
炎症が慢性化すると、その周辺組織は低酸素状態になります。
- 体が新たな血管を作ろうとする
不足を補おうとして、通常ではできない異常な血管(=モヤモヤ血管)が新生されます。
- 痛みを引き起こす神経が同時に伸びてくる
モヤモヤ血管の周囲には痛みの神経(侵害受容線維)も一緒に伸びてくるため、ちょっとした刺激でも強い痛みを感じやすくなります。
動注治療の手順
- 超音波検査で動注治療を行う血管を同定します。
- 細い注射針で塞栓物質や抗炎症薬を流し込んで、異常血管を消失させます。
- 結果として、過敏になった神経も沈静化し、痛みが軽くなります。
※動注治療後にすぐに痛みが改善する人もいれば、3~4週間後に改善する人もいます。
提供元:Okuno Clinic. 奥野 祐次医師
対象となる疾患
以下の慢性痛に対して高い効果を期待できます:
- 手指:腱鞘炎、ヘバーデン結節、母指CM関節症、TFCC損傷、ドケルバン病など
- 肘:テニス肘、ゴルフ肘など
- 足:足底腱膜炎、アキレス腱炎、外反母趾、足関節滑膜炎など
科学的根拠と世界的な普及状況
- 2013年、奥野祐次医師によって動注治療が世界で初めて論文発表されました(米国JVIR誌)。
- アメリカでは変形性膝関節症に対するカテーテル治療(GAE)が2022年にFDA認可され、Medicare(国民保険)適用となり、2024年には年間4,000例以上の施行報告があります。
スタンフォード大学やシカゴ大学などの研究機関でも研究が進行中です。
- ドイツでは2023年から保険診療に導入され、HeliosグループやCharité病院で多数実施中です。
- イギリスではオックスフォード大学が全国的な臨床研究を主導しているほか、臨床研究「GEKO試験」が進行中です。
- 韓国・台湾・スペインなどでも、アキレス腱炎・五十肩などへの治療成績が報告されています。
治療効果とタイミング
- 多くの症例で、治療後3〜4週間で効果が最も実感される人が多く、2〜3回の治療が勧められています。
- 患者の約70~90%が何らかの痛みの軽減を実感し、そのうち半減以下に改善する方は約70%という報告もあります。
- 他にも台湾のパイロット研究(9名)では、痛みVASが平均76 mmから18 mmに劇的に改善し、約89%の患者が痛み半減を達成しています。
安全性に関する情報
- 使用薬剤(イミペネム・シラスタチン由来の粒子)は 異常血管に選択的に作用し、正常血管には影響が少ないとされています。
- 一時的な副作用としては、「内出血」「皮膚の色調変化」「注入時のピリピリ・熱感」「軽度の腫れ」などがありますが、ほとんどは短期間で軽快するものです。重大な副作用の報告は極めて少なく、壊死や損傷は報告されていません。
治療費用
動注治療はすべて自費診療となります。
ヘバーデン結節、CM関節症への動注治療
※片手におさまっていれば痛い指が複数あっても25,000円です。痛みが両手におよぶ場合は35,000円になります。
- 片手
- 25,000円(税込価格: 27,500円)
- 両手
- 35,000円(税込価格: 38,500円)
足底腱膜炎、外反母趾、アキレス腱炎、への動注治療
- 片足
- 30,000円(税込価格: 33,000円)
- 両足
- 40,000円(税込価格: 44,000円)
テニス肘、ゴルフ肘、野球肘への動注治療
- 片肘
- 30,000円(税込価格: 33,000円)
- 両肘
- 40,000円(税込価格: 44,000円)