プロロセラピーProlotherapy
慢性疼痛に対する
自然治癒力を利用した再生医療
プロロセラピーとは?
プロロセラピー(Prolotherapy)は、慢性的な痛みや関節の問題の治療に用いられる再生医療の一種です。この治療法は、「増殖療法(Proliferation Therapy)」とも呼ばれ、損傷した組織や弱った靱帯、腱、関節などを刺激し、その自己治癒能力を促進することを目的としています。高張ブドウ糖などの刺激性溶液を患部に注射することで、組織の自然治癒力を活性化し、靱帯や腱、関節の修復を促進する治療法です。
プロロセラピーの基本概要
- 目的: 損傷した靱帯や腱、関節周囲の組織を強化し、慢性的な痛みや不安定性を改善。
- 適応症状:
・慢性的な腱炎(例: テニス肘、アキレス腱炎)
・関節の不安定性(靱帯の緩み)
・慢性腰痛、膝痛、肩痛
・スポーツ障害(例: 足底筋膜炎)
・変形性関節症(軽度から中程度)
治療の仕組み
プロロセラピーでは、注射によって軽い炎症反応を人工的に誘発します。この炎症反応が修復プロセスを刺激し、損傷した組織の再生を促します。
- 炎症の誘発:
高張ブドウ糖(通常10~20%)が主に使用され、これが組織に刺激を与えます。
- 治癒プロセスの活性化:
炎症により損傷部位での血流が増加し、コラーゲン生成が促進されます。
- 組織の強化:
新しく生成されたコラーゲンが靱帯や腱を強化し、関節の安定性を向上させます。
治療の流れ
- 初診と診断:
・医師が痛みや不安定性の原因を診断します。
・必要に応じて画像検査(MRI、超音波など)を行い、注射部位を特定。
- 治療計画の作成:
・治療対象となる部位や回数を決定します(通常3~6回の治療が必要)。
- 治療実施:
・注射部位を消毒。
・高張ブドウ糖溶液を局所麻酔薬(リドカインなど)と混ぜて注射。
・超音波ガイドを使用する場合もあり、正確に損傷部位にアプローチ。
- 経過観察:
・注射後、軽い炎症(痛み、腫れ)が数日間続く場合がありますが、これが修復プロセスの一部です。
・数週間ごとに次回の治療を実施します。
使用される主な注射液
- デキストロース(高張ブドウ糖): 主成分として炎症を誘発。
- 局所麻酔薬(リドカイン、プロカイン): 痛みの緩和。
- 生理食塩水: 希釈用。
- 追加成分(場合による):
・PRP(多血小板血漿): 血液成分を濃縮し、組織再生をさらに促進。
・ビタミンB12やヒアルロン酸: 特定の症状に応じて追加。
治療のメリットとデメリット
メリット
- 自然治癒力を活用し、根本的な治療を目指す。
- 手術を回避できる可能性がある。
- 慢性的な痛みや不安定性を改善。
- 身体への負担が少ない非侵襲的な治療。
デメリット
- 即効性はない(効果が出るまで数週間~数か月かかる場合がある)。
- 数回の治療が必要で、コストがかかる場合がある。
- 一時的な炎症や痛みが注射後に起こることがある。
- 効果には個人差があり、すべての患者に有効ではない。
適応外のケース(注意点)
- 重度の感染症や炎症がある場合。
- 特定の自己免疫疾患や血液凝固障害を持つ患者。
- 妊娠中や重篤な病状を持つ場合は、医師と相談が必要。
治療後のアフターケア
- 軽い運動: 過度な負荷を避け、血流を促進するための軽いストレッチや運動を行います。
- 炎症対策: 治療後の炎症を和らげるために冷却を行うことが推奨される場合があります。
- 禁忌行動: NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)の使用は避けるよう指示される場合があります(炎症反応を抑えないため)。
プロロセラピーを選ぶ理由
- 手術やステロイド注射などの侵襲的治療を避けたい人に適している。
- 長期的に慢性痛を改善する治療法を求める人におすすめ。
- スポーツ障害や日常生活に支障をきたす慢性痛を根本から解決することを目指す。
プロロセラピーは、専門的な知識を持つ医師の診断と施術のもとで行う必要があります。症状に応じて他の治療法と併用されることも多いので、詳細については医師に相談してください。
以下は、プロロセラピー、ステロイド注射、体外衝撃波療法(ESWT)、およびTENEX超音波吸引治療のメリットとデメリットを比較した表です。
治療法 |
メリット |
デメリット |
プロロセラピー |
- 自然治癒力を利用し、組織の修復と強化を促進
- 手術を回避できる可能性がある
- 長期的な改善が期待できる
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- 効果が現れるまで時間がかかる(数週間~数か月)
- 注射部位に一時的な痛みや腫れ
- 複数回の治療が必要
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ステロイド注射 |
- 即効性があり、炎症や痛みを迅速に軽減
- 簡便でコストが低い
- 短期的な症状緩和に有効
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- 長期使用で軟部組織の弱化(腱断裂リスク)
- 効果が一時的(数週間~数か月)
- 高頻度での使用は推奨されない
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体外衝撃波療法 |
- 非侵襲的(手術を伴わない)
- 組織の修復や血流促進を促す
- 繰り返し治療が可能
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- 治療中や直後に痛みを伴う場合がある
- 数回の治療が必要
- 効果が個人差あり、保険適用外の場合コストが高い※1
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TENEX |
- 超音波ガイドで正確に損傷部位を治療
- 侵襲性が低いが手術に近い効果
- 回復が比較的早い
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- 専門施設でのみ実施可能
- 高価で保険が適用されない場合がある※2
- 感染や神経損傷のリスクがある
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※1 ※2:当院ではすべて保険適応